齲蝕や窩洞形成によって産生される象牙質様構造物を積極的に産生させる事によって早期治療や外来刺激によって引き起こされる歯髄の炎症を防ぐことが可能となると考えられる。象牙質様構造物の形成や歯根形成に関与する因子を分子生物学的手法を用いて解明することによって従来の手法に加えて応用し、今まで困難であった症例においても歯根再形成を効果的に促す事や象牙質様構造物を積極的に産生させる事を可能にすることが出来ると考えられる。歯根や象牙質様構造物形成に関与している未知、既知の遺伝子を解明し、その塩基配列より蛋白構造まで明らかにしそれらの因子が部位、時期的にどのように関与しているのかを解明し、また同時に歯髄の硬組織誘導に関与する因子を解明し歯髄疾患治療への応用の手がかりとすることを本研究の目的とした。 歯髄の硬組織誘導を調べるために、ラット切歯にNd : YAGレーザーを照射し早期に大量に硬組織を誘導させ、硬組織誘導が活発に行われている切歯よりmRNAを調整しライブラリーを作製した。ライブラリーから任意に200個のクローンを拾い、一部の塩基配列を調べ、Gene Bankで検索した。既に報告されているラット切歯ライブラリーの遺伝子と比較して、ネスチンなどの遺伝子が多く認められており硬組織誘導に関与する遺伝子を多く含んだライブラリーであることが示唆された。さらに調べた結果、Heparan sulfate proteoglycanのFamilyであるGlypican-1が多く発現していることがわかった。GlypicanはDrosophilaにおいて発達形成中に多く発現しており、形態形成に重要な役割があることが示唆されている。Immunohistochemistryの手法を用いてGlypican-1を始めとするHeparan sulfate proteoglycanの歯髄における発現を調べた結果、象牙芽細胞様細胞に発現しており象牙質様構造物の産生に関与していることが示唆された。
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