超音波による歯の破折・亀裂の診断についての研究で、まず、アクリル板と歯の超音波での到達進度を比較した。同条件の超音波出力で、アクリル板では良好な到達進度が得られたが歯においては、アクリル板のような到達進度は得ることができなかった。また、同様の鮮明な波形を得ることはできなかった。歯の到達進度をより得るには、歯に対しての出力を大きくしなければならないが波形の読み取りが非常に困難となった。アクリル板は、ほぼ均等な密度を有し空洞がないが、それに対して歯(特に象牙質)は多孔性で超音波の散乱・減弱が大きくなったためと思われる。また今回は出力5MHz探触子と10MHz探触子、3.0mm遅延剤(基底面に弯曲を与え焦点調整を行なっているもの)と7.5mm遅延剤(規定面は平面)での組み合わせでは、3.0mm遅延剤においては焦点調節の弯曲による遅延剤内での音波の散乱によりノイズが大きく7.5mmの焦点調整の行なっていないもののほうが良好な結果を得た。その中でも出力5MHz探触子と7.5mm遅延剤の組み合わせが測定範囲と再現性の点で有用であった。また、破折・亀裂の対しての波形の読み取りではまず、アクリル板では完全に肉眼で破折と認識できるものに関してはオシロスコープの波形に現れてきているが、いわゆる、亀裂と認識できるもの(ヒビ)に関しては、波形上では亀裂がないものの波形と同様の波形が示され、波形から読み取ることができなかった。 今後、破折の波形が現れる幅の限界の測定を行い、また、歯に対してノイズの少なくするためさらに探触子を小型化し、また遅延剤を波形が一点に集中することができるよう探触子・遅延剤の改良を行なう必要があると思われる。
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