研究概要 |
義歯を装着することによって生じる感覚の変化は,患者にとって時に大きな苦痛となり,そのことが義歯装着を妨げる要因になることが多い.そこで,本研究では温度感覚および味覚の客観的評価法の確立と床装着時における味覚,触覚および温度感覚の変化を明らかにすることを目的として行っている. まず,本年度は,硬口蓋を被覆する床の厚さを薄くすることが味覚にどのような影響を与えるかを知るために,厚さ1.5mmと厚さ0.5mmの実験用口蓋床を用いて味覚検査を行った.その結果,厚さ1.5mmの床を装着した際に味覚閾値が上昇した酸味と苦味については,厚さ0.5mmの床を装着すると有意に味覚閾値が低くなった(第108回日本補綴歯科学会学術大会にて発表).また,平成14年度大阪府老人大学講座受講生を対象に,アンケートおよび対面調査を行った.その結果,硬口蓋を被覆している義歯を装着している群では,味覚および温度感覚のいずれにおいても低下したと答えた割合が有意に高く,また材質については,レジン床よりも金属床の方がいずれの感覚についても有意に低下したと答えた割合が高かった(平成14年度日本補綴歯科学会関西支部学術大会にて発表予定).また,厚さの弁別能についても厚さ0.5mmの床を装着する方が厚さ1.5mmの床を装着するよりも,弁別閾値は小さくなった(日本補綴歯科学会雑誌掲載予定). このことから,床の厚みを薄くすることが可能である金属床がレジン床と比較して感覚の面で有利であることが示された. 一方,温度感覚についてはベルチェ効果を利用した装置を製作し,現在予備実験を行っている.予備実験終了後,被験者および義歯装着者を用いて温度感覚の実験を行う予定である.
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