研究概要 |
軟性裏装材は患者の装着感のみならず咀嚼効率も向上させるとの報告があるものの,顎提粘膜の血流動態あるいは残存歯槽骨の骨吸収動態に対して与える影響については全く検討されていない.本研究は,正常ラットの上顎顎提粘膜および残存歯槽骨を対象とし,シリコーン系あるいはアクリル系軟性裏装材が粘膜の血流動態を正常化するとともに残存歯槽骨の骨吸収を防止するかどうかについて検討することを目的とした.また,軟性裏装材のレジリエンスの性質の相違が顎提粘膜の脈管系の正常化および歯槽骨の骨吸収の防止に対してどの様な影響を与えるかについて検討を行い,さらに,顎提粘膜の血流動態と歯槽骨の骨吸収動態の関連性について検索を行うことによって,血流動態によって歯槽骨の吸収程度を予測することが可能かどうかについて検討を行うことを目的とした. 実験動物には,10週齢のWistar系雄性ラットを用い,10週齢時に両側上顎第一臼歯を抜歯し,5週間の治癒期間を設定した.この顎提に対して咀嚼時のみに加圧することが可能な骨吸収誘発装置装着を装着した.装置粘膜面の材料により加熱重合レジン,シリコーン系あるいはアクリル系軟性裏装材の3実験群(一群45匹)を設定した.装置の適用期間は1,2,4,6,8,10,12,16および20日後の9期間とし,その間毎日顎提粘膜の血流動態を計測した.装置適用期間の終了した実験動物から上顎骨を採取し,通法に従い,4μmヘマトキシリン・エオジン標本を作製した. 現在までに,本研究を遂行するための基礎的データとして,印象採得時のシリコーン印象材の動態,咬合圧負荷時の顎骨の応力分布あるいは裏装材の適応方法に関する研究を行い報告した.また,このデータに基づいて作製した骨吸収誘発装置を用いて,現在血流動態の計測および組織採取を開始したところである.
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