研究概要 |
老人病院入院患者50名,大学病院外来患者50名を対象に,誤嚥性肺炎に深く関係する咽頭の微生物叢とデンチャープラークを調査した結果,ほとんどの微生物が同時に検出され,関連性が認められた.採取したカンジダとブドウ球菌が同時に検出される傾向にあり,カンジダのような巨大な微生物が,病原性の高い微生物のリザーバーとなって,肺炎を起こさせやすい環境を作っているという仮説を立てている. そのような背景のもと,高齢者の口腔咽頭に特徴的なカンジダの病原性を解明するために,カンジダと他の病原性の高い微生物との共存させ,凝集性を検討した. 誤嚥性肺炎原因菌であり,カンジダと同時に検出される傾向にあったブドウ球菌との凝集性を検討した結果,高率ではないが,共凝集をする株が存在した.また,ミレリーグループを含むレンサ球菌とも同様に凝集性を検討したが,その結果,ミレリーグループの一つであるS. intermediusと高率で共凝集する株が存在した.また,S. salivariusは,共凝集を示さなかった.さらに,カンジダと共凝集を示した株,共凝集を示していない株を使用して,celldesk上でカンジダと共存させ,バイオフィルムを作製し,比較検討した.その結果,共凝集する株の方が,しない株よりはがれにくく,厚いバイオフィルムを形成した.この結果から,カンジダは,ブドウ球菌やS. intermediusといった誤嚥性肺炎を引き起こす微生物のリザーバーとなっていることが十分に考えられる.逆に,カンジダと共凝集を示さなかったS. salivariusについては,カンジダの付着を抑制する傾向にあり,今後,健全な細菌叢を育成するという観点からも詳細に検討していく必要がある.
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