新しい顎運動測定器はDSP(Digital Signal Processor)を使用したディジタル信号処理を応用することでシステムの小型化、汎用化を目指している。前年度DSPを制御する基本的なプログラムの開発を行いDSPの開発に必要な基本的知識と技術の習得を行った。これに引き続き、睡眠時の顎運動を含め臨床および研究において操作性の向上を目指し、本年度は測定器のハードウエア(主にセンサコイル)の小型化に関する研究を行った。 現在開発を行っている測定器は、上下顎に小型センサを装着し顎運動を6自由度で測定する測定方式であるため測定時の被験者の生理的な運動を可能な限り制限することのないようにセンサの小型化軽量化が必要である。今回小型軽量化したセンサコイルは、直径の異なる3つの円形コイルを組み合わせた3軸コイルであり、仕上がり寸法で直径約20mm、重さ9.0gと小型軽量である。この3軸コイルを上下顎に各1個(1次コイル、2次コイル)装着する、つまり上顎に装着した1次コイルで磁場を発生し、下顎に装着した2次コイルに誘導される信号をディジタル化した後、新たに開発した信号処理プログラムで処理することで下顎の6自由度顎運動測定が可能である。新たに製作した3軸コイルを使用して被験者の顎運動測定を行った結果、センサの小型軽量化を図ることで、解析に耐えうる測定精度を維持したままで測定器の操作性が向上するとともに被験者への負担も軽減できた。 本研究の成果は演者として第3回AAP (台湾) 「Relationship between lateral border movement and posterior tooth contacts」および、第3回DMA (インターネット国際会議) 「A novel measuring device of jaw movement with a pair of three-axes」にて報告した。また、共同演者として第110回日本補綴歯科学会(長野) 「小型センサを用いた顎運動測定器の改良」、第109回日本補綴歯科学会(東京)「平衡側接触が側方限界運動に及ばす影響」にて報告した。
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