器質的原因による摂食・嚥下障害には顎義歯、舌接触補助床(PAP)やパラタルリフト(PL)などの補綴装置を用いた歯科学的リハビリテーションの必要性がある。しかし、このようなリハビリテーションは広くに周知されておらず、潜在的患者は多いが普及していない。そこで摂食・嚥下リハビリテーションに応用できる新たな歯科学的訓練装置を考案、開発し、広く一般に普及させる必要性がある。本研究の目的は、以下の通りである。 1)舌運動機能および口腔周囲の筋訓練および、口腔感覚機能の鋭敏化などを考慮して、摂食・嚥下リハビリテーションに応用できる新たな訓練装置を考案し、開発すること。 2)摂食・嚥下リハビリテーションにおいて、新たに開発した訓練装置の有効性を明確にすること。 前年度は訓練装置考案に先立ち、摂食・嚥下障害を有する舌腫瘍術後患者の生理学検査(舌圧測定を含む)を行い、基礎的データを収集した。 今年度は、実際に歯科学的訓練装置を考案した。具体的には、形態は舌圧測定用プローブに類似させ、内圧19.6kPaの小型バルーンを有し、現在も試作中である。当初は補綴的装置を考えていたが、試作品はリハビリテーション器具としての性格が濃い。使用は簡便かつ安全であり、チェアサイドやベッドサイドでもリハビリを行うことができ、加えて安価である。 装置の有効性の証明については、本学附属病院受診の舌腫瘍患者10名を対象に検討する予定であったが、現在は3名のデータ収集にとどまっている。また、摂食・嚥下リハビリを受けている脳血管障害患者については2つの医療機関と提携し、データ収集することが決定した。 次年度は、さらに研究対象(舌腫瘍患者と脳血管障害による摂食・嚥下障害患者)を増やし、リビリテーション前後の生理学データを比較することにより装置の有効性を明確にし、これについて学会発表や論文発表を行う予定である。
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