研究概要 |
口腔腫瘍術後に多くみられる器質的原因による摂食・嚥下障害には顎義歯,舌接触補助床(PAP)やパラタルリフト(PL)などの補綴装置を用いた歯科学的リハビリテーションが必要と思われる.しかし,このようなリハビリテーションは広くに周知されておらず,普及していない.そこで本研究の目的は,以下の通りである. 1)舌運動機能および口腔周囲の筋訓練および,口腔感覚機能の鋭敏化などを考慮して,摂食・嚥下リハビリテーションに応用できる新たな訓練装置を考案し,開発すること. 2)摂食・嚥下リハビリテーションにおいて,新たに開発した訓練装置の有効性を明確にすること. 14年度は訓練装置考案に先立ち,摂食・嚥下障害を有する舌腫瘍術後患者の生理学検査(舌圧測定を含む)を行い,基礎的データを収集した. 前15年度は,舌圧測定用プローブ類似した内圧19.6kPaの小型バルーンを有した形態の歯科学的訓練装置を試作した.この試作品はPAPやPLなどの補綴的装置よりもリハビリテーション器具としての性格が濃く,機能的原因の摂食・嚥下障害患者にも容易に応用できる.また,装置の有効性の証明するために,九州大学病院受診の舌腫瘍患者3名のデータ収集を行った. 今年度は,さらに研究対象を舌腫瘍患者5名と脳血管障害後遺症の摂食・嚥下障害患者3名に増やし,データを収集した.各個人についてリビリテーションによる舌圧の上昇は確認できたが,被験者数が少なく,個人間のばらつきが大きいため,装置の有効性を証明するには至っていない.今後も地道に対象者を増やし,早期に装置の有効性を証明することが必要である.
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