研究概要 |
当初はマウスの脳組織より単離した神経細胞を用いて実験を行っていたが,効率よく実験を進めるため,神経分化機構の解明に広く用いられているラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞を使用した。PNCS/HS/DMEMを用いて,コラーゲンコーティングしたシャーレにPC12細胞を播種し,コンフルエントに近くなるまで培養した。 PC12細胞は,血清添加培地中では増殖し,NGF添加無血清培地中では神経様細胞に分化するが,無血清・NGF無添加の培地中では細胞死に陥ることはよく知られている。しかし近年,NGF非存在下でも他の因子によって神経様細胞への分化が誘導された報告がある。そこで,実験には次の2種の培地を使用した。(1)DF培地にTIPを補った無血清培地(DFM),(2)DF培地にTIPを補つた無血清培地(DFM)にNGFを添加した培地。 それぞれの培地で培養したPC12細胞に,種々の周波数,加速度および振動負荷時間の振動を負荷した後,顕微鏡用CCDカメラを用いて検鏡画像をコンピューター上に取り込み,神経突起の伸展について,振動を負荷していないコントロール群と比較した。 NGF無添加の細胞においては,振動負荷の影響があまり認められない傾向にあり,NGF添加の細胞の方が振動の影響を受けやすいことが示唆された。NGF添加の細胞において,加速度レベルが低く負荷時間が短いとコントロールとの間に有意さが認められず,また,加速度レベルが高く負荷時間が長い場合には神経突起の伸展が抑制される傾向にあった。
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