研究概要 |
平成14年度は,歯の喪失に伴う咀嚼機能の低下や歯根膜の機械的感覚受容器の喪失による機能時の顎口腔系からの求心性情報の障害が,記憶・学習機能に関与している中隔核-海馬の投射系のcholinergic neuronにどのような影響が見られるかを調べた. Wistar系雄性ラットを用い,以下に示す6匹ずつの3群に分割し、免疫組織化学的検討を行った.すなわち,(1)対照群:実験期間を通して固形飼料にて飼育する群,(2)粉末飼料群:実験期間を通して粉末飼料にて飼育する群,(3)臼歯切除群:実験開始時に臼歯歯冠部を切除し,この時点から粉末飼料にて飼育する群,以上の3群を設定した. 免疫組織化学的検討を行うために,各観察週齢になった時点で,全身麻酔後,灌流固定し,直ちに,脳の全摘出を行った.その後,摘出した脳の薄切切片を作成した.一次抗体としてanti-ChAT抗体(ケミコン社製,rabbit anti-ChAT polyclonal antibody,1:1000)を用いて染色し,cholinergic neuronの観察を行った.平成14年度は,cholinergic neuronを観察,および記録を行うために顕微鏡デジタルカメラ(OLYMPUS社製,DP12)を購入した. その結果,対角帯核・内側中隔核では,対照群と比して臼歯切除群においてcholinergic neuron数の有意な減少を認めた.しかし,顎口腔系からの求心性情報の障害が,いかなる投射経路を経て中枢神経系へ投射しているかに関して明らかにされていない. 平成15年度は,顎口腔系の求心性情報と中枢神経系との関連性を明らかにするために,顎口腔系の求心性情報と中枢神経系の投射経路を解明していく予定である.
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