研究概要 |
無歯顎患者に対して顎口腔系に機能的に調和した生理的な咬合を付与するためには,垂直的ならびに水平的に適切な下顎位を採得する必要がある.これまで多くの研究者によって,さまざまな無歯顎患者の咬合採得法が報告されてきたが,いずれの咬合採得法も形態的,機能的にみて定量的な明確な基準となるものは乏し<,臨床では,これらの方法のいくつかが併用されているのが現状である.そこで本研究では,無歯顎患者の下顎位を機能時に発現される咬合力の作用方向と咀嚼筋活動の協調性などから客観的に評価し,これらを指標とした咬合採得法を確立することを研究目的とした. 平成14年度は,無歯顎患者の咬合力を三次元的に測定するために,西山らが開発した三次元咬合力測定装置の口腔内への設置方法について検討を行なった.本システムは,咬合力の大きさに加えて,その作用方向を正中基準線に対する垂直および水平展開角で表示できることが特色かつ独創的な点である.また,既存システムと新規購入したデータ解析ソフトウェアを用いて,無歯顎患者の咬合力を三次元的に分析するためのプログラムを作成した.上記により,本システムを無歯顎患者に応用した結果,無歯顎患者において咬合力の三次元的な測定が可能となった.平成15年度は,これまでの研究成果を踏まえ,無歯顎患者の咬みしめ時に発現される咬合力を三次元的に測定し,咀嚼筋活動の協調性との関係について検討を加えた._今後さらに,種々の下顎位において発現される咬合力の作用方向と咀嚼筋活動の協調性との関係から,義歯の下顎位を客観的に評価し,これらを指標とした咬合採得法について検討したい.
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