今年度は上顎の形態による差異が唇顎口蓋裂児に比し少ないと思われる口蓋裂単独症例を対象に調査を行った。Furlow法による口蓋裂形成術施行例(18例、以下F群)について術後の鼻咽腔閉鎖機能と構音の評価を経年的に行って正常言語獲得の経過を調査し、5歳時の評価を言語成績とし、これをpush-back法施行例(30例、以下P群)と比較した。、なおP群ではNasometerによる検査が実施されていなかった(購入されていなかった)ため、今回は比較できなかった。 5歳時の言語成績をみると、鼻咽腔閉鎖機能と正常構音の獲得について、両群に有意差はなかった。 正常構音獲得の経過をみると、F群では幼児期早期の構音が発達する時期にまだ鼻咽腔閉鎖機能が完全には獲得されていないために異常構音が生起し、機能の改善に伴って消失したものと考えられた。逆にP群は、幼児期早期に鼻咽腔閉鎖機能が獲得されるため構音発達も良好である反面、機能獲得が不十分だった例では異常構音の消失も少ないと考えられた。 F群では3歳までは鼻咽腔閉鎖機能の獲得がP群に比しやや遅く、この間に異常構音が発症しやすいが、その後には加齢に伴い著しい機能改善がみられて異常構音が自然消失するという特徴があった。 現在、対象を唇顎口蓋裂児とし、データの収集、結果の考察を行っている。これらの結果は、言語機能の獲得と正常な顎発育の両者を目的とする二段階口蓋形成術手術法の効果を検討する上で、重要な示唆を与えるものと期待される。
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