今回の研究成果 (1)in vitro 申請者らの方法を用いて平面培養したラット唾液腺細胞を、1型コラーゲンゲルを用いて3次元培養し、形態学的検討を行った。1週間および2週間後に標本作成しHE染色にて形態学的評価を行ったところ、2週間後の標本において、管腔様の構造の形成が認められた。 今後は3次元培養中に各種増殖因子(bFGF、EGFなど)を添加し、これらが細胞の形態形成に与える影響について検討を行っていく。 (2)in-vivo ラット唾液腺萎縮モデルを用いて、移植方法の手技的検討を行った。ラットの顎下腺導管を結紮し1週間後、顎下腺の萎縮を確認し結紮を除去、同時にfluorescent cell linker(PKH26)にて標識したラット培養唾液腺細胞を、細胞懸濁液としてマイクロシリンジを用いて萎縮した顎下腺腺体内に注入した。また、コントロールとして通常のラットの顎下腺にも、同様の手技で培養唾液腺細胞を移植した。萎縮群・コントロール群ともに2週および4週後にと殺、顎下腺を摘出し凍結標本作成、蛍光顕微鏡下で観察を行った。その結果、移植後2週では萎縮群・コントロール群とも移植細胞の存在が認められた。しかし移植後4週では、コントロール群では移植細胞は存在しないか、あるいは間質にわずかに存在していたのに対し、萎縮群では唾液腺実質内に移植細胞は残存していた。 今後は生着した移植細胞の分化・機能について、抗アクチン抗体などによる免疫染色によって評価を行う。また移植細胞の生着に関与する因子の解析を行う。 以上の成果より、われわれが確立した方法により培養した唾液腺細胞は形態形成能をそなえ、また萎縮唾液腺に対する細胞移植療法の可能性を示唆したといえる。さらに移植細胞の生着に関する因子の解析は、その他の臓器における細胞移植全般に影響を与えると思われる。
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