研究概要 |
今年度はCationic Liposomeキャリアーとするbax遺伝子治療についてin vitroでの実験を行った。Bax遺伝子挿入プラスミド(以下,bax-plasmid)はUpstate Biotechnology社より購入した。このbax-plasmidを大腸菌にトランスフォームし,培養,bax-plasmidを大量に精製した。Cationic Liposomeとbax-plasmidをいくつかの比率で複合体(以下,Liposome+plasmid)を形成,細胞(悪性黒色腫,骨肉腫)に作用,MTT assayにより増殖抑制効果を評価した。Bax-plasmidの至適投与量は細胞1×10^4当たり0.2μgで,Liposome+plasmid作用により骨肉腫細胞で50%以上の腫瘍増殖抑制効果を認めた。ただし,悪性黒色腫細胞では明らかな増殖抑制は確認できなかった。また,Liposome+plasmid作用後,ウエスタンブロットでbaxタンパクの発現の変化を評価すると,骨肉腫細胞では顕著に増加していたが,悪性黒色腫細胞ではほとんど変化はみられなかった。Liposome+plasmid作用すなわちbax遺伝子導入により,腫瘍細胞がアポトーシスを発現し,増殖抑制効果が現れると考えられる。そこで,Liposome+plasmid作用によるアポトーシス発現をTUNEL染色で評価したところ,骨肉腫細胞ではアポトーシス発現細胞はコントロール群に比べ約5倍に増加していた。また,MTT assayで明らかな増殖抑制がみられなかった悪性黒色腫細胞でもアポトーシス発現細胞は約7倍に増加していた。すなわち,Cationic Liposomeをキャリアーとするbax遺伝子導入により腫瘍細胞内でアポトーシスが誘導され,増殖抑制効果が現れたと考えられた。
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