本研究の目的は末梢神経再生過程におけるカドヘリンファミリーおよびそれと細胞質内で結合する各種カテニンの発現部位を超微形態学的に明らかにし、これを基礎に末梢神経再生過程における神経束形成やソーティング等の機序を解明することである。平成14年度に引き続き坐骨神経の正常時および再生時の軸索とシュワン細胞におけるβ-カテニンとαE-カテニンの超微形態学的な観察を行った。間接酵素抗体法による免疫電顕の結果、β-カテニンは正常時および再生時のシュワン細胞と思われる細胞質内に発現していることがわかった。これを裏付けるべくウエスタンブロットを行い、実際にβ-カテニンが坐骨神経で発現していることを証明した。現在はProtein gene product 9.5との電顕レベルでの2重染色により、β-カテニンが軸索では発現していないことを確認中である。またαEカテニンも同様に正常時および再生時の坐骨神経で発現していることを認めているが、それがシュワン細胞なのか軸索なのかを特定するには至っておらず、現在、神経組織の固定方法等に改良を加えながら電顕にて観察を継続中である。これとは別に坐骨神経レベルの脊髄および後根神経節を免疫染色した結果、後根神経節ではαE-およびαN-カテニンの両者が神経細胞体内で発現していたのに対し、脊髄内の前角細胞体ではαE-カテニンのみが発現していることがわかった。この結果はKobe Journal of Medical Sciencesに掲載されることが決定している。
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