研究の目的;坐骨神経でのカドヘリン、カテニンの発現を免疫電顕にて観察することにより、末梢神経における接着分子の働きを解明することにある。結果;マウス正常坐骨神経ではPカドヘリンが発現していなかったが、OBカドヘリンとMカドヘリンの発現が確認された。カテニンについてはラット正常坐骨神経でβカテニンおよびαE-カテニンの発現が確認され、αE-カテニンは免疫電顕にて無髄神経シュワン細胞の細胞質全体にび慢性に発現していることが判明した。一方、有髄神経シュワン細胞のlateral loopsやouter loopsにもαE-カテニンはび慢性に発現していたが、inner loopsでは発現していなかった。これはαN-カテニンが軸索のみで発現していた我々の過去の報告とは全く異なっていたが、両カテニンとも細胞膜の裏打ちには集積していないことから、軸索-シュワン細胞間接着は弱くかつダイナミックなものであることが推察された。また結紮損傷モデルでのαE-カテニンの発現を確認したところ光顕レベルでは損傷部位に一致した反応の増強が認められ、αE-カテニンが何らかの役割を果たしていることがうかがえたが、PGP9.5との電顕レベルでの2重染色ができておらず、反応が軸索またはシュワン細胞のどちらであるのかが識別できなかった。次に幼齢ニワトリを用い坐骨神経の親細胞を観察してところ、後根神経節細胞ではαE-、αN-カテニン共に細胞体全体で発現していたのに対し、前角神経細胞ではαE-カテニンのみが発現しており、αN-カテニンは認められなかった。αカテニンのサブタイプの違いによってその神経線維が遠心性か求心性かを識別できる可能性も考えられたが、先の坐骨神経ではαE-カテニンの軸索での発現は認めておらず、カテニンの発現が同一細胞の中でも細胞体と軸索とでは異なる可能性も挙げられた。これらの点については動物種の違いもあり、さらに詳しく調べておく必要性があると考えている。
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