研究概要 |
癌治療後の5年生存率は予後や治療成績を示す一般的指標となっている。しかし,初回治療の長期経過後に癌の発生した報告例も増加している。これらの症例が,新たに発生した多発癌か,長期経過後に生じた晩期再発例か,また放射線治療例ではその誘発癌であるかなどの確定は困難である。一般的に,同一部位で同じ組織型を示す腫瘍では,晩期再発例とみなすことが多い。今回,晩期再発例について遺伝子不安定性(Genomic Instability : GI)を検索し,単発癌34例と多発癌14例でのGI結果と比較検討した。晩期再発例7例は,6年以上経過後に再発した例で,原発部位は舌が4例,下顎歯肉が1例,口底1例,頬粘膜1例であった。頬粘膜の1例は,左側頬粘膜原発で13年後と7年後に再発を繰り返した例であった。GIの検索には5つのマーカー(D2S123,BAT25,BAT26,BAT40,TP53)を用い,DNA複製エラー(RER)と対立遺伝子の欠失(LOH)を検討した。 晩期再発群のRER頻度は,7例中2例(28.6%)で,1例は初発時,1例は再発時にRER(+)であった。単発群と多発群でのRER頻度は,各34例中2例(5.9%),14例中5例(35.7%)であった。 TP53のLOHは,晩期再発群4例中1例(25%),単発群21例中6例(28.6%),多発群6例中4例(66.7%)で陽性であった。この晩期再発群の1例は初発時,再発時ともにLOH陽性であった。RER(+)例における癌関連遺伝子の変異は,晩期再発のRER(+)例では変異はなかった。単発RER(+)例2例と多発RER(+)例1例にBAX(G)8,DPC4(G)6,BRCA1(A)8が変異を示した。
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