研究概要 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染は歯科領域においても解決しなければならない重要な課題である。黄色ブドウ球菌は鼻腔や,口腔内に常在しているため,歯科治療時に感染する可能性が極めて高いのにもかかわらず,歯科領域で発現したMRSAを染色体DNAに型別に分類し,またそのβーラクタム剤耐性パターンを示した報告は極めて少ないのが現状である。今後はMRSAの治療指標が必要と考えられ,その感染経路を証明し,獲得耐性と難治性への影響因子を検討することが重要であると考える。今回,当大学病院口腔外科外来初診患者120人に口腔また鼻腔よりブドウ球菌選択培地を用いて,ブドウ球菌を分離した。その分離株の中から,黄色ブドウ球菌鑑別キットを用いて,黄色ブドウ球菌を分離した。その結果,鼻腔から36株,口腔から27株の63株の黄色ブドウ球菌を分離することができた。黄色ブドウ球菌所有患者は54人(男23人,女31人)で,年齢は50歳から80歳の中高年齢層が多かった。当科受診時の臨床診断は智歯周囲炎が11人と最も多かった。鼻腔と口腔の両方から分離することができた患者は9人であり,13歳から73歳で特に年齢の差は認められなかった。それら分離株の薬剤耐性の現状を知るため,βーラクタム剤,蛋白合成阻害剤,DNA合成阻害剤等に対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定し,さらにMRSAを分離すること。また分離した株から染色体DNAを抽出し,染色体DNA型別の分類の検討を現在行っている。
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