研究概要 |
黄色ブドウ球菌(S.a)は鼻腔や,口腔内にも常在し,歯科治療時にも感染する可能性がきわめて高い。今回,広島大学附属病院第二口腔外科で、外来初診患者の口腔と鼻腔からS.aを分離し,薬剤耐性の有無を測定した。 方法 患者140人の口腔と鼻腔から,黄色ブドウ球菌ラテックスキット(栄研)を用いてS.aを分離し,微量液体希釈法により,β-ラクタム系薬剤であるメチシリン(DPIPC),フロモキセフナトリウム(FMOX),塩酸セフカペンピポキシル(CFPN),セファクロル(CCL),イミペネム(IPM),マクロライド系のクラリシッド(CAM),ニューキノロン系の塩酸ロメフロキサシン(LFH),グリコペプチド系薬のバンコマイシン(VCM)が示す最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。また分離したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のコアグラーゼ型を検索した。 結果 検索対象は,鼻腔の35株,口腔の30株で,計65株のS.aが分離できた。 S.aの分離できた患者は男性21人、女性32人で、70歳以上80歳未満が最も多かった。S.a65株のうちMRSAは8株で、このうち6株はニューキノロン系薬剤耐性で、すべてがマクロライド系薬剤耐性の多剤耐性型のMRSAであった。この8株はすべてVCM感受性であった。MRSAのコアグラーゼ型はII型が8株中6株と最も多かった。MRSA保菌者は何らかの全身疾患を有している患者であることが示唆された。 今回の研究の要旨を第48回ブドウ球菌研究会(広島市、2003年9月)、第14回広島感染症研究会(広島市、2003年12月)において発表した。
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