黄色ブドウ球菌(S.a)は鼻腔や、口腔内にも常在し、歯科治療時にも感染する可能性がきわめて高い。平成15年度は、広島大学附属病院口腔外科で、外来初診患者の口腔と鼻腔からS.aを分離し、薬剤耐性の有無を測定し、その概要を第48回ブドウ球菌研究会(広島市、2003年9月)、第14回広島感染症研究会(広島市、2003年12月)において発表した。本年度は、宿主側である口腔粘膜の感染、炎症における免疫反応を検討するため、不死化口腔粘膜上皮細胞、不死化線維芽細胞を用いて、免疫細胞遊走を主要とするchemokineの炎症時、菌体接触時における発現を検討した。 材料および方法 不死化口腔粘膜上皮細胞、不死化線維芽細胞を用いて、INF-γ(10ng/ml)、TNF-α(10ng/ml)、グラム陰性菌体成分であるLPS(1ug/ml)、黄色ブドウ球菌加熱死菌(1ug/ml)で刺激後、経時的に全RNAを抽出、cDNAを作製し、各種chemokineの定量的RT-PCRを施行した。 結果 CC chemokineのCCL5 mRNAはロ腔粘膜上皮細胞ではINF-γ刺激によって12時間後に増大したが、線維芽細胞では、INF-γで著変なく、TNF-α刺激12時間後に増大した。CXC chemokineのCXCL10 mRNA、CXCL11 mRNAは口腔粘膜上皮細胞ではINF-γ刺激のみ増大したが、線維芽細胞では、INF-γ、TNF-α刺激で同様に増大を示した。CXCL8 mRNAは口腔粘膜上皮細胞ではLPS刺激によって増大したが、線維芽細胞では、LPSで著変なく、TNF-α刺激で著明に増大した。その他の各種chemokine mRNAに関しても細胞間での発現の違いが認められた。
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