【方法】オスのWistarラットを使用した。摘出心臓をランゲンドルフ法で、95%酸素と5%二酸化炭素で飽和させたTyrode液を使用して灌流し、心腔内の血液を洗い流した。次に、Ca-freeのTyrode液を使用して拍動を停止させた後、酵素にて約15分間灌流することにより細胞間結合を切り離した。遠心、濾過し単離細胞をCa-freeのTyrode液に集めた。パッチクランプ法は細胞膜のイオン分子活動を電流として記録する方法である。今回はindide-out法で細胞内からの影響を測定した。静脈麻酔薬のミダゾラムのK-ATPチャネル活性に対する影響を検討した。【結果】inside-out法は、細胞内膜をATP-free溶液にさらすことによりK-ATPチャネルは活性化される。この活性化に対しミダゾラム(100μM)でK-ATPチャネルの開口率に減少が認められた。このことからミダゾラムの作用が細胞内伝達物質などを介さずにK-ATPチャネルを直接抑制する可能性を示唆している。【考察】先行する短時間の心筋虚血、あるいは揮発性麻酔薬の前投与が、続いて起こる長時間の心筋虚血に対して保護的に作用することが分かり、それぞれischemic preconditioning(IPC)、anesthetic preconditioning(APC)と呼ばれている。これらの作用は、K-ATPチャネルの拮抗薬であるglibenclamideで抑制されることから、K-ATPチャネルが関与している可能性が示唆されている。今回の測定は単一濃度のミダゾラムであり、溶液濃度の影響は測定していない。また効果発現部位(心筋)の濃度と血中濃度が常に一致しているわけではない。静脈麻酔薬のミダゾラムは、K-ATPチャネルへの直接作用が鎮静麻酔中の心筋虚血に対して保護効果を持たない可能性を示唆している。
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