研究概要 |
局所麻酔薬(プロカインとリドカイン)が、培養ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)からの一酸化窒素(NO)産生に与える影響について検討した。NOは一酸化窒素合成酵素(NOS)により合成される。血管内皮細胞にはNOSのアイソフォームのひとつである内皮型NOS(eNOS)が存在する。HAECから蛋白質を抽出し、SDS-PAGEにて展開しニトロセルロース膜に転写しブロッキングを行った。1次抗体として抗eNOS抗体を、2次抗体としてHorseradish peroxidase標識抗ラビットIgG抗体を用い反応させAmersham ECL Kitにて検出した。その結果、培養HAECにおいてeNOS蛋白の発現が認められた。そのため、HAECのeNOSを活性化させ、産生されるNO量に対する局所麻酔薬の影響を評価した。HAECをアセチルコリンで刺激した後、局所麻酔薬を作用させ緩衝液にアルギニンを添加してNO産生量を測定した。NO産生量は、2.3-Diaminonaphthaleneを用いて緩衝液中のNOの代謝産物であるnitrateおよびnitriteの量を測定することにより検量した。その結果、プロカインはHAECにおいて、NOの産生量を有意に減少させた(コントロール:6.578±0.428、プロカイン:3.433±0.261、p<0.0001)。一方、リドカインはNO産生に影響を及ぼさなかった(リドカイン:7.144±0,566)。以前我々は子牛大動脈内皮細胞(BAEC)を使用して局所麻酔薬がNO産生に与える影響について検討したが、HAECにおいても類似の結果が得られた。現在、多種類の局所麻酔薬の影響および局所麻酔薬がHAECにおいてNO産生を抑制する機序についての検索をすすめている。
|