研究概要 |
p53経路の異常が発癌や悪性度をはじめとする細胞生物学的特性に関与しているとされ,臨床ではこれらをマーカーとして用いることが悪性度の評価や臨床経過の推測に有用であると考えられている.そこで,p53経路に属するp53,mdm2およびp21の各遺伝子発現と臨床病理学的因子がどのような関連性があるのかを明らかにし,さらに,p53によって誘導され,DNA修復に関与しているとされる新規p53ターゲット遺伝子p53R2について,口腔癌における発現の意義を明らかとすることを目指した. 研究対象は,当科で治療した口腔扁平上皮癌症例,白板症症例および智歯抜歯の際に得られた歯肉のホルマリン固定パラフィン包埋切片で,p53,mdm2,p21およびKi-67の発現を免疫組織化学的染色を用いて,p53R2をin situ hybridization法を用いて,そして,PCR-SSCP法にてp53変異を検索した.そして,得られたデータと臨床病理学的因子,すなわち,年齢,上性別・部位・組織学的分化度,リンパ節転移の有無,生命予後および術前放射線化学療法の組織学的効果の各因子との関連性について検討した. その結果,口腔扁平上皮癌において,p53,mdm2およびp21の3つの蛋白発現の組み合わせを検索することが,腫瘍増殖能所属リンパ節転移,そして生命予後の各因子の推定に有用なマーカーであることが示唆された.さらに,新規p53ターゲット遺伝子p53R2は,口腔扁平上皮癌の発症に関与している可能性があり,腫瘍進展,分化および放射線化学療法の感受性に関与する分子であることが示唆された.
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