研究概要 |
p53依存的に誘導されるp53R2は,細胞DNA修復および合成に際してのdNTP供給に関与する遺伝子である。本研究では,標的とする遺伝子のmRNAを特異的に分解し,タンパク質発現を効率良く阻害するRNA interference法(以下RNAi)を用いて,p53R2が口腔癌治療における分子標的となり得る可能性について検討した。 ヒト口腔扁平上皮癌細胞株SAS, HSC-4,OSC19およびCa9-22に対して5-FUを作用させ,p53R2発現をRT-PCRで解析した。また,p53R2のRNAiについては,21塩基対の2本鎖RNA(dsRNA)を設計し,オリゴフェクタミンを用いてSASおよびHSC-4細胞にトランスフェクションした。また,p53R2発現抑制による抗腫瘍効果についてMTT法を用いて検討し,さらに5-FU感受性への影響についても検討した。 p53R2の発現はp53依存的であった。RNAiによりp53R2発現は特異的に抑制されていた。p53R2 RNAiによる抗腫瘍効果において,SAS細胞は生細胞率63.4%,HSC-4は63.8%であり,ほぼ同様な腫瘍増殖抑制効果がみられた。さらに5-FU感受性については,p53R2 RNAi投与群は非投与群と比較して,SAS細胞では1.9倍,HSC-4細胞では1.5倍に腫瘍増殖抑制効果が増強していた。 p53R2は口腔癌治療における分子標的として有用であり,その発現抑制と抗癌薬との併用により,さらに強力な治療効果が期待できることが示唆された。
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