歯肉扁平上皮癌は早期に顎骨に浸潤し、骨を吸収する。癌による骨吸収は破骨細胞によって起こるといわれているが、癌の増殖と骨吸収・転移は骨リモデリングを超える速さで行われており、破骨細胞による骨吸収以外にも他の吸収因子が働いていると考えてもおかしくない。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は細胞外基質の分解にかかわる主要なプロテアーゼで、これまでに癌細胞およびそれらを取りまく細胞が産生するMMPが癌の浸潤・転移に深く関与することが明らかにされてきた。 私の研究ではこれまでにマウス扁平上皮癌顎骨浸潤モデルで免疫組織学的にMMP-9が癌の増殖・浸潤・骨吸収に関連することが示唆された。また、in vitroの研究ではウエスタンブロッティング法でヒト舌癌由来扁平上皮癌培養細胞NT-1、NT-2からMMP-9が分泌されていることが分かった。今年度はさらにNT-1、NT-2培養細胞をザイモグラフィーを用いて、細胞が分泌しているかどうか詞べでみた。その結果、ザイモグラフィーにおいてMMP-9の分泌は認められたが、MMP-2については発現量はわずかであった。その他のMMPと抑制因子については来年度を予定している。
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