腫瘍随伴症候群の中で高カルシウム(Ca)血症は最も頻度の高い症候のひとつであり、腎不全や意識障害などをもたらして癌患者のQOLの著しい低下をきたす。高Ca血症は、ほとんどの場合は腫瘍が過剰に産生する副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH-rP)が骨吸収と腎におけるCa再吸収を促進することにより発症する。骨吸収についてはその分子機構の解明が急速に進んでおり、骨芽細胞/間質細胞の表面に発現するreceptor activator of NF-κB(RANK)リガンドが破骨細胞の形成や活性化に関与していること、また、Osteoprotegerin(OPG)が破骨細胞前駆細胞/破骨細胞に存在するRANKと競合して、RANKリガンド(RANKL)と結合することにより、破骨細胞の形成や活性化を抑制する作用を有する。本研究では悪性腫瘍性高Ca血症モデルを作製し、これにOPGを投与して、高Ca血症改善効果、さらに全身状態および生命予後に及ぼす影響について検討する。 平成15年度は昨年に引き続いて、悪性腫瘍性高Ca血症モデルマウスを作製するためにヒト口腔癌細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)を添加した培地中で培養し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に細胞のサスペンションを調製し、ヌードマウスの腋下皮下に注入することにより細胞を移植して、数日間飼育した。定期的に血中Ca濃度をOCPC法により、血清アルカリホスファターゼ(ALP)活性をBessey-Lowry法により測定し、高Ca血症発症のモニタリングを行った。
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