研究概要 |
ステロイドであるグルココルチコイド過剰による骨粗鬆症は古くから知られている。このような長期のグルココルチコイド投与患者には顎骨の骨粗鬆症もよく見られる。私達の研究グループでは、グルココルチコイド過剰によるビタミンD代謝異常に注目し研究を行った。マウスに合成グルココルチコイドであるデキサメサゾンを過剰に投与すると、腎臓において、活性型ビタミンDの合成酵素である1α-水酸化酵素の遺伝子発現は中程度の抑制がみられるが、ビタミンDの分解酵素である24-水酸化酵素の遺伝子発現は強く誘導されることを見出した。そこで、私は腎と骨におけるグルココルチコイドによるビタミンD分解酵素遺伝子発現促進機構を培養細胞を用いて研究した。特に、ビタミンDの標的細胞である骨芽細胞を用いて検索した。骨芽細胞にデキサメサゾンを処理すると24-水酸化酵素の遺伝子発現が促進された。またこの促進効果には活性型ビタミンDである1,25(OH)_2D_3が必須であった。デキサメサゾンは骨芽細胞におけるc-fos遺伝子を活性化させ、Fosタンパク質の合成を高めることを明らかにした。これらの結果から、骨においてデキサメサゾンはFosタンパク質の合成を促進させ、24-水酸化酵素遺伝子プロモーター領域のビタミンD応答要素(VDRE)とAP-1部位が相互に活性化され、その遺伝子発現を著明に上昇させることを初めて明らかにした(Kurahashi I et al. Endocrine, 17(2):109-118, 2002.)。
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