研究概要 |
1.HQとBPAの抗酸化剤・抗酸化酵素・金属イオンによる細胞障害性の影響 ハイドロキノン(HQ)のHSC-2,HSGおよびHL-60細胞に対する細胞障害性は、抗酸化剤であるN-acetyl-L-cysteine(NAC),L-cysteine, ascorbic acid, sodium ascorbate, ascorbic acid 6-palmitateの添加で抑制されたが、ascorbicacid 2,6-dipalmitateの添加では変化がみられなかった。次にHQのHSC-2,HSG細胞に対する細胞障害性は、抗酸化酵素であるcatalaseで抑制、Cu/Zn SODで若干増強した。金属イオンにおいては、Co(II)の添加で変化はなく、Cu(II)の添加で増強、Fe(III)の添加で抑制がみられた。ビスフェノールA(BPA)においても各種癌細胞に濃度依存的な細胞障害性を示したBPAの細胞障害性は抗酸化剤のNACを添加しても影響がみられなかった。また、BPAにヒドロキシラジカルの消去剤である安息香酸を添加しても、影響がみられなかった。HQ/BPA(HQとBPAの併用、1:1モル比)においてHQの細胞障害性はBPAの同時添加により濃度依存的に増加され、相加的作用がみられた。 2.HQとBPAによるシグナル伝達経路および作用点(Western Blotting法によるカスパーゼファミリーについてのタンパク発現) アポトーシス誘導濃度のHQ(0.05 mM)およびBPA (0.4 mM)処理後のcaspase-3,8,9の活性の経時変化を解析した。HQおよびBPAともに2時間後から、ミトコンドリア依存的な内因性経路に関与するcaspase-9の活性化がみられた。さらにその下流に位置するcaspase-3についても検討した。HQにおいては添加後4時間から活性型caspase-3が検出され、BPAにおいては添加後3時間をピークに活性型caspase-3が検出された。ミトコンドリア非依存的な外因性経路に関与するcaspase-8についても検討を行ったところ、HQおよびBPAいずれで処理しても活性型caspase-8は検出されなかった。以上の結果は、HQおよび8PAは内因性経路を活性化してアポトーシスを誘導することを示唆する。
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