研究概要 |
本年度は,口腔癌患者の血清DPP IV活性低下の機序を明らかにすることを目的とし,ヒトKB癌細胞と健常人リンパ球の同時培養系を用いて検討した.その結果以下の知見を得た. 1.リンパ球培養液中にTGF-β1を添加しリンパ球の増殖とDPPIV活性を検討したところ,濃度依存的にリンパ球の増殖抑制とリンパ球抽出液および培養上清中のDPP IV活性の低下が認められた. 2.ヒトKB癌細胞培養上清を30%添加した実験系に中和抗体である抗TGF-β1抗体を添加し,リンパ球の増殖とDPP IV活性の変化を検討したところ,濃度依存的に正常リンパ球の85.3%までリンパ球増殖の回復がみられ,リンパ球抽出液および培養上清中のDPP IV活性の抑制もそれぞれ91.5%,78.7%まで回復した. 3.ヒトKB細胞培養上清から得られた8〜30kDa分画を添加した実験系で,Th1,Th2細胞から産生されるサイトカインをELISA法で測定した結果,8〜30kDa分画添加群ではTリンパ球の活性化に関与するサイトカイン(IL-2,IL-10,IL-12,IFN-γ)の産生量の低下を認めた.また,抗TGF-β1中和抗体を添加した群ではサイトカイン産生量の回復を認めた. 本研究の結果より,口腔癌細胞に由来する活性型TGF-β1がリンパ球の活性化とCD26/DPPIVの発現を抑制し,Th1,Th2細胞から産生されるTリンパ球活性化サイトカインの産生も抑制することが明らかとなった.
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