マウス骨髄由来細胞に、セファデックスG10カラムを通すことにより得た細胞に、CSF-1(M-CSF)と、昨年度合成することに成功したreceptor activator of NF-kappa B (RANK) ligand(RANKL)とを添加した培養液を用いることにより、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性陽性多核細胞を得ることに成功した。次に、象牙質切片上でこれら培養系を行い、骨吸収活性(吸収窩)を持つことを走査型電子顕微鏡で確認し、TRAP陽性多核細胞が破骨細胞であることを確認した。しかしながら、RANKLの真核細胞発現ベクターをマウス骨髄由来細胞ならびにマウス由来株化細胞への遺伝子導入を行ったが、効果的・効率的に行うことができなかった。 また、予備実験の結果から炎症性サイトカインの1つであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)に関する知見が得られた。セファデックスG10カラムを通すことにより得た細胞に、CSF-1とリコンビナントRANKLを加えた培養系を用いて、MIFの作用を検討した。MIFはその濃度に依存して、TRAP陽性細胞の総核数を変化させることなく、TRAP陽性多核細胞の出現数を減少させることが判明した。また、象牙質切片上に形成された吸収窩を観察したところ、MIF作用群では形成された吸収窩の大きさが明らかに小さかった。以上の結果より、MIFは分化・成熟過程にある破骨細胞の融合過程を阻害することで、成熟した破骨細胞の出現を抑制しているものと考えられた。 今後はこれら遺伝子を強制発現させる系を利用して、培養系に応用し解析を行い、歯根吸収の制御が効果的・効率的に行えうるか否かを評価する。
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