本年度はreceptor activator of NF-kappa B (RANK) ligand (RANKL)の真核細胞発現ベクターをマウス骨髄由来細胞ならびにマウス由来株化細胞(RAW264.7細胞、J774-1細胞)への遺伝子導入を行った。インデューサ(テトラサイクリン)を添加時にのみ目的遺伝子を発現するベクターを用いることによって、目的タンパク質の発現がコントロール可能となり、適切な時に適切な発現を可能とした。しかしながら、リポフェクション法、エレクトロポレーション法では、ともに導入率が0.01%以下であった。また、レトロウイルスベクターを用いた方法では導入率が0.01%程度であった。以上のように、遺伝子導入を効果的・効率的に行うことができなかった。 予備実験の結果から炎症性サイトカインの1つであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)はその濃度に依存して、TRAP陽性細胞の総核数を変化させることなく、マウス骨髄由来細胞から分化したTRAP陽性多核細胞の出現数を減少させることが判明した。そこで、MIFの真核細胞発現ベクターをマウス骨髄由来細胞ならびにマウス由来株化細胞への遺伝子導入を、上記と同様にリポフェクション法、エレクトロポレーション法、レトロウイルスベクターを用いた方法で行ったが、効果的・効率的に行うことができなかった。 マウス由来株化細胞(RAW264.7細胞)にMIFを作用させると、TRAP陽性細胞の総核数を変化させることなく、マウス骨髄由来細胞から分化したTRAP陽性多核細胞の出現数は減少した。 以上の結果より、MIFの作用はマウス骨髄由来細胞のみならず、マウス由来株化細胞においても確認され、真核細胞発現ベクターの新たな開発によって、歯根(骨)吸収の制御が効果的・効率的に行えることが可能となりうると考えられる。
|