下顎頭軟骨の外力に対する反応性に関する日内変動について、顎整形力の適用時刻の相違が下顎頭軟骨や骨組織の反応性に与える影響を細胞レベルで解明することを目的として以下の研究を行った。実験動物として規則的な明暗サイクルに適応させた成長期のラットを選択した。これを顎整形力を全く負荷しない対照群、24時間負荷する全日群、明期に負荷する明期群、暗期に負荷する暗期群の4群に分類し、独自に開発した規格化チンキャップ装置にて300mNの顎整形力を21日間負荷した。その後下顎骨や下顎頭軟骨の外力に対する反応を検索するため、形態、組織、免疫組織学的分析を行った。その結果、形態学的検索では実験群における下顎骨の短縮と変形が認められた。さらに明期群では暗期群と比較して下顎頭長、下顎枝長の減少や下顎頭の屈曲が認められた。組織学的検索では実験群の下顎頭矢状断面中央部において軟骨細胞層の非薄化が認められた。免疫組織学的検索では、肥大細胞層のマーカーであるtype X collagenの局在する軟骨層の厚径が暗期群と比較して明期群で非薄化していた。さらに増殖性細胞マーカーであるPCNAとDAPIの二重染色により、全日群の軟骨細胞増殖活性は、対照群に対して約80%、明期群では対照群に対して約60%、暗期群に対して約50%抑制されたことを明らかにした。以上を総括すると、ラット下顎骨・下顎頭軟骨への顎整形力の適用により、1)下顎頭成長抑制、2)下顎骨の変形、3)軟骨細胞増殖活性の抑制、4)軟骨細胞最終分化の抑制、において休息期(明期)に高い反応性を示す日内変動が認められ、休息期に活性化された細胞はメカニカルストレスに対する感受性の高いことを明らかにした。上記に示す整形力の時間医学的効果について得られた知見を外国論文にて発表した。
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