本研究の目的は、ラット歯周組織に慢性炎症を起こす実験モデルを、Actinobacillus actinomycetemcomitans由来のリポポリサッカライド(LPS)とPorphyromonas gingivalis由来のプロテアーゼを用いて確立することである。平成15年度は、精製したLPSをラット歯肉溝に濃度を変えて投与し、ヘマトキシリン・エオジン染色で炎症性変化が最も著明となる条件を検討した。 ラット歯肉に対して、異なる濃度のLPS(5μg/μl、10μg/μl、20μg/μl、40μg/μl)を1日1回、マイクロピペットを用いて4週間投与した。その結果、付着上皮の根尖側移動の大きさは、20μg/μlのLPS濃度で最大値を示した。また、結合組織における炎症性細胞数は、5μg/μlと10μg/μlのLPS濃度で多くなった。 P.g.プロテアーゼに関しては、精製しても凍結保存の間、経時的に失活が起こることが想定されたため、精製を断念した。そして、A.a.ロイコトキシンを代わりに精製し、0.5mg/ml、2.0mg/ml、4.0mg/mlの各濃度で4週間投与した。しかし、どの濃度においても著明な炎症性変化は観察されなかった。 平成16年度は、細菌性の病原因子に着目するだけではなく、糖尿病や高脂血症などの歯周病の危険因子とされる全身疾患を実験的に誘発させ、より顕著な炎症性変化を示す歯周病モデルを作製する予定である。
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