歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalis (P.gingivalis)は歯周炎の発症、進行においてもっとも重要視されている細菌の一つである。いくつかの病原因子を有しているが、なかでも菌体表面および菌体外に産生するプロテアーゼは生体タンパク質の分解を引き起こし、宿主細胞に傷害を与え、歯周病に関連する種々の病態を生み出すと考えられている。一方、近年、破骨細胞活性化抑制因子である、osteoprotegerin (OPG)の存在が報告され、骨疾患に重要な役割を示す可能性があるものとして、注目されている。歯周病の歯槽骨の破壊においても、原因菌による骨芽細胞におけるOPGの分泌低下が報告されているが、骨芽細胞以外に発現しているOPGの役割は、いまだ不明である。本研究者は、OPGがP.gingivalisの培養上清により分解され、高濃度のFBSおよびプロテアーゼ阻害剤であるTLCKによりそれらの分解が抑制されることを見つけ報告した(Biochem Biophys Res Commun 2004;315:107-12.)。このことは、OPGがP.gingivalisのプロテアーゼにより分解されることを示唆する。本研究結果はP.gingivalisのプロテアーゼが従来言われてきた細胞障害や生体防御機構に影響するだけではなく、骨破壊という歯周病にもっとも特徴的な病態に直接関与している可能性を示唆するものである。また、血管内皮細胞は多様なサイトカインの供給源であるとともに、白血球などの免疫担当細胞が血管から組織へ移行する際に、重要な役割をはたす。よって、ヒト血管内皮細胞のP.gingivalisに対するOPG産生について検討を行った。その結果、同菌により血管内皮からOPGの産生が誘導されることが示された。このことは血管内皮細胞においてOPGが同細菌による骨破壊を阻害する調整因子として働いている可能性を示唆している。
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