研究概要 |
本研究では、不正咬合者において認められる咬合重心の偏位が、直立時の姿勢制御に対してどのような影響を及ぼしているかを解明することを目的としている。現在、神経耳科学的に異常が無く、歯痛ならびに顎関節の疼痛を認めない健康な成人男性6名のデータを採得した。問診ならびにガムの自由咀嚼時における咀嚼筋筋電図より以上の6名に偏咀嚼は認めなかった。咬合重心の偏位を判定するために咬合感圧フィルム"デンタルプレスケール50H、Type-R"(富士写真フィルム社製)を咬頭嵌合位にて5秒間咬合してもらい、オクルーザーFPD-703(富士写真フィルム社製)を用いて分析した結果、6名中3名に咬合重心の偏位を認めた。直立時における姿勢制御の評価のために重心動揺システムG-5500GRAVIANAIYZER Ver 2.03B(アニマ社製)を用い、閉眼時の安静位ならびに最大噛みしめ時における足圧中心の経時的変化を計測し、分析を行った。また、この際、ポリグラフPEG-1000(日本光電社製)を用い、下顎骨ならびに全身の姿勢制御に関わっていると考えられる両側の咬筋,側頭筋前腹,腓腹筋の筋電図を同時記録し分析を行った。重心動揺の動揺の大きさを示すといわれている総軌跡長は、安静位では咬合重心の偏位を認めなかった正常群で67.607cmであったのに対して偏位を認めた偏位群では103.791cmと大きかった。最大噛みしめ時ではそれぞれ103.791cmに対して108.389cmと差は少なくなっていた。筋電図からは重心動揺測定時の60秒間における筋電図積分値を算出した。正常群,偏位群ともに咬筋ならびに側頭筋の筋電図積分値は、安静位に比べて最大噛みしめ時が大きい傾向が認められたが、腓腹筋では差が少なかった。また、個人間でのデータのばらつきが大きく正常群と偏位群との間における比較では、両群の間に特徴的な傾向は認められなかった。今後は、さらに被験者の数を増やし検討を加えたいと思う。
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