近年、矯正力による歯の移動時の機械的負荷により、圧迫側にIL-1並びにIL-6などの炎症性サイトカインとプロスタグランディンが誘導されていることが動物実験等で示されている。そこで、歯根膜線維芽細胞の細胞死に、これらのサイトカイン等の生理活性物質が関与している可能性を考え、本細胞の細胞死誘導因子を検索する実験を行っている。 上記の研究を実施するにあたって、ヒトの歯根膜細胞を使用する研究内容および、恵者からの歯根膜細胞採取について、明海大学歯学部倫理委員会に審査の申請書を提出した。その結果、2002年6月26日に研究の実施について承認が得られた。その後、2003年1月28日にも審査を受け、本研究の継続について承認が得られた。 その後、矯正治療のために、便宜抜歯が必要となった患者に歯根膜細胞採取について説明し、同意書を作成して協力を得た。歯根膜細胞は骨芽細胞様の特性を有していることが示されている。そこで骨芽細胞のマーカーである、アルカリフォスフォターゼ(ALP)活性を測定した。その結果、その歯根膜細胞のALP活性は約25mU/mg proteinであった。マウスの骨芽細胞(MC3T3 E-1)のALP活性が20〜30mU/mg proteinである。ゆえに、歯根膜細胞のALP活性は骨芽細胞のそれとほぼ同等の活性を有していることが示された。さらに、骨芽細胞のALP活性はIL-1βにより増加することから本細胞のALP活性についても検討した結果、有為な増加が認められた。したがって、本細胞は本細胞の特徴である骨芽細胞様の特性を有していることを確謝した。そこで、本細胞の研究に使用するに足る量の細胞量を確保するため、大量に培養し、冷凍保存を行っている。
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