研究概要 |
本研究は脳性麻痺(以下,CPと略す)者の顎口腔機能に関する研究,特に下顎位感覚と咀嚼筋筋活動との関係である。また,中枢神経系に起因する口腔機能障害の病態を中枢神経レベルから解明する方法の確立にあり,CP者の口腔機能障害を理解するためと期待される。そこで,本年度はCP者を対象に笑気吸入鎮静法の笑気ガスが咬合や下顎位感覚に及ぼす影響の有無を確認するため笑気吸入時と非笑気吸入の条件における下顎位感覚の相違を咀嚼筋に対する振動刺激前後の弁別能を比較検討をし,記録分析を行うことになっていた。しかし,その前に一つ解明しなければならないことがあるため本年度は以下のことを行った。上記については平成16年度に行う予定である。本年度の研究は笑気ガスがCP者の下顎位感覚に及ぼす影響を知る目的で,CP者の下顎に付着する筋の筋感覚を非笑気吸入時と笑気吸入時の条件として下顎位感覚弁別能テストにより評価した。被験者はCP者8名,対象として健常者8名とした。そして,以下の知見を得た。(1)健常群内の非笑気吸入時と笑気吸入時における弁別能の比較では,試験棒が基準棒より太い10.5mmおよび11.0mmの場合では,笑気吸入時は非笑気吸入時よりもR.M.E.が有意に高い値を示した。(2)CP群内の非笑気吸入時と笑気吸入時における弁別能の比較では,試験棒が基準棒より細い9.5mmの場合では,笑気吸入時は非笑気吸入時よりもR.M.E、が有意に低い値を示した。以上により,CP者は笑気ガスによって上位中枢レベルで神経機能が抑制された結果,CP者固有の持続的な筋トーヌスの亢進が抑制される,つまり,CP者において,笑気ガスが上位中枢を介して下顎に付着する筋の筋紡錘γ-運動ニューロンの活動を抑制する何らかの効果があることにより弁別能力が上昇したものと考えられる。
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