研究概要 |
抜去後のヒト第三大臼歯のエナメル質を32μm以下に粉砕し粉末試料とした。この粉末試料200mgを、OPPmF,225ppmF,450ppmFのフッ化ナトリウム溶液に、H_2O_2濃度が0%,15%,30%となるよう調整した溶液2mlに37℃で48時間浸漬した。浸漬後、粉末試料を1Mの過塩素酸に溶解し、フッ素イオン電極を用いてフッ素濃度を測定した。また、浸漬後の試料を乾燥し、FTIRで分析した。FTIRスペクトルより有機物の存在を示す1650cm^<-1>のアミドIの吸収スペクトルと、浸漬前後で変化しないものと考えられるPO_4の吸収スペクトルの比を求め、エナメル質中の有機物の相対量とした。結果は二元配置分散分析およびシェフの多重比較を行った。フッ素の取込量および有機物の相対量は、浸漬溶液のフッ素濃度とが有意に関与していた(P<0.01)。フッ素の取込量は、フッ素濃度とH_2O_2濃度が高いと有意に高い値を示した(P<0.01)。有機物の相対量は、H_2O_2濃度が高いほど減少し、またフッ素濃度が高くなるほど増加した。以上の結果より、歯牙漂白に用いられているH_2O_2はエナメル質の有機物を溶解し、その濃度に対応して有機物が溶解されるため、機械的にフッ化物の取り込み量が増加すると考えられた。この結果についてH16.6.31に第51回齲蝕研究ヨーロッパ会議(ORCA)で発表した。 また、この粉末試料200mgを15%過酸化水素にフッ化物濃度が0,225,450ppmFになるようにNaFを溶解した溶液に、それぞれ37℃で、10min,2h,48hの条件で浸漬し、浸漬時間とフッ素の取込量および有機物の相対量について比較検討した。フッ素の取り込み量はフッ化物濃度が高いほど、また浸漬時間が長いほど増加した(P<0.01)。また、FTIRの結果よりエナメル質中の有機物の相対量はフッ化物濃度が高いほど、また浸漬時間が長いほど増加した(p<0.01)。しかし浸漬時間が48hのサンプルは有機物の相対量が10min、2hのサンプルと有意差がなく、ブリーチング時間は有機質の溶解という点では最適時間があると考えられた。以上の結果はH16.9.18第53回日本口腔衛生学会で発表した。
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