研究概要 |
ヒト培養歯肉上皮シート(HCGES)の臨床応用への基礎データとするため、その生物学的性状を検討し、以下のことを明らかにした。 1)VEGF, TGF-α及びEGFといった細胞増殖因子を産生しており、その基底細胞層がある程度の増殖活性を有している。Keratinocyte Stem Cell MarkerであるCytokeratin19陽性細胞の存在は上皮細胞としての分化度は低いが、Keratinocyteへの分化能を有していることが示唆される。 2)Involucrinの陽性所見が基底層より上部で認められることから、これら陽性細胞が棘細胞層や顆粒細胞層に相当する性格を有していることが示唆された。 3)PCNA陽性の基底細胞が多数認められることから、HCGESが増殖活性を保っていることが考えられた。 4)培養上清中のVEGF濃度とPCNA陽性基底細胞が有意な相関を示したことから、VEGF産生は主として増殖活性を有した基底細胞から放出されていることが示唆された。 これらの結果から、HCGESを構成する上皮細胞は各種の細胞増殖因子を放出し、かつ潜在的な角化細胞への分化能と増殖活性を有していることから、生物学的にactiveな状態であることが考えられた。 この基礎データをふまえ、実際の臨床応用として剥離性歯肉炎により疼痛のある患者にHCGESの移植を行い、現在その予後について経過観察中である。Biopsyの組織所見では、術前にびらん、水庖形成のみられた病変部移植後には、ほぼ正常な上皮組織へと変化しており、Biological dressingとしての臨床的有用性が確認された。
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