ウサギを使用した実験は手技的に困難であった。上顎洞の位置が歯科インプラントの実験として適さないことが判明した。そのため、実験動物をラットに変更した。部位は頭蓋骨を利用し、脳硬膜を上顎洞に見立てて実験を行ったところ、臨床的感覚として現実のソケットリフトと同様であることが分かった。また、そのHE切片を観察したところ、人の上顎洞に対するソケットリフトと同様の所見が見られた。すなわち、既存骨からインプラント体が突き出ていて、脳硬膜(=上顎洞粘膜)は穿孔しておらず、インプラント周囲に出来たスペース内に新生骨が形成されていることが認められた。すなわち、このラット頭蓋骨を使用したソケットリフトの実験系は、有用なソケットリフトの実験モデルとなりうると考えられた。また、ラット頭蓋骨を使用することで、実際の人間に使用しているインプラント体(直径4.1mm、長さ6mm)を用いるこ.とが可能であるため、より現実的な実験系であると考えられる。上記内容を各種インプラント関連の研究会(2003.5/29東京、2003.10/18-19大阪)、シンポジウム(2003.2/11東京、2003.6/14-15東京、2003.11/7-9大阪)にて発表した。骨形成過程をHE染色にて観察したところ、骨形成は、脳硬膜側の既存骨表面からとリフトした脳硬膜骨膜側から確認された。今後は自家骨の填入によって骨形成過程に差があるかを明確にしていきたい。また、ソケットリフトの実験を繰り返し行ったところ、ソケットリフトの臨床上有用な変法を考案できた。今後はこの変法に関しても研究結果から立証していきたい。
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