研究概要 |
歯周炎患者の歯周ポケットからは、多くの歯周病原性細菌が分離され、その細胞壁構成成分は宿主免疫系を活性化する。自然免疫系によるこれら細胞壁構成成分の認識機構には不明な点が多かったが、近年、Toll-like receptor(TLR)4がLPSの認識に、またTLR2はペプチドグリカンやリポ蛋白等の菌体成分の認識に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これらの自然免疫系レセプターは歯周組織の感染防御においても重要な役割を果たしていると考えられ、我々は、長崎大学医学部・歯学部附属病院に来院した歯周病患者からインフォームドコンセントを得て採血を行い、血球中のゲノムDNAを抽出し、Tlr2およびTlr4遺伝子の突然変異の有無について検索を行った。現在までに、24名についてTlr2およびTlr4遺伝子の高頻度に遺伝子変異の報告されている各2部位について検索を行ったが変異は検出されていない。今後も症例数を増やし、またプロモーター領域まで遺伝子変異の検索範囲を拡大して解析していく予定である。また、我々はマイコプラズマ由来のリポペプチドの構造とTLR2刺激活性に関して検討し、脂肪酸とペプチド配列の両方の構造がそれぞれ活性に関与していることを明らかにした(Infect Immun.2004.72(3),1657-1665、北海道歯学雑誌 2003,24(2),168-177)。また歯周病原細菌Bacteroides forsythusからもリポ蛋白を抽出し、TLR2刺激作用と歯肉線維芽細胞のアポトーシスに及ぼす影響について報告した(Infect Immun.2004,72(3),1657-1665)。今後も口腔内病原体のTLRを介する生物学的作用についても解析を進めていく予定である。
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