研究概要 |
1.歯周病患者の歯肉溝滲出液中のHGF まず,充分なインフォームドコンセントを行ない同意の得られた被験者において,歯周ポケットからペリオペーパーを用いて歯肉溝滲出液(GCF)を採取し,GCF中のHGFを測定した。その結果,健康および歯周炎のいずれの歯肉においてもHGFが検出された。GCF中のHGF濃度は歯周炎部位で有意に高く,Probing depth,骨欠損レベル,Gingival Indexなどの歯周炎の臨床パラメーターと正の相関を認めた。さらにGCF中のHGF量は歯周治療により有意に減少した。 2.ヒト歯肉におけるHGFの産生と活性化 In situハイブリダイゼーションの結果,HGFは歯肉において産生されることが観察された。また,HGF activatorが歯肉上皮に認められることを免疫染色により確認し,HGFの活性化も歯肉においておこることが明らかにされた。 3.糖尿病患者の歯肉溝滲出液中のHGF 歯周治療が終了しメインテナンス中で糖尿病を有する患者を被験者としGCF中のHGF量を測定したところ,臨床パラメーターと正の相関がみられる傾向を示した。 今後,さらにサンプル数を増やし統計学的検討を試みるとともに,糖尿病患者で上昇する様々な因子(フリーラディカル、糖、脂質、メディエーター)を歯肉由来培養線維芽細胞に加えHGF産生に及ぼす効果を検討し,in vitroにおけるHGF産生のメカニズムの解明をはかる予定である。
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