研究概要 |
歯周疾患の発症には、疾患感受性を規定する、宿主側の遺伝的な因子が関与していると考えられている。血清中に存在するマンノース結合レクチン(mannose-binding lectin, MBL)はマンノースなどの糖鎖を介して微生物と結合し、食細胞の食作用を促進したり,補体を活性化するなど、自然免疫において重要な役割を担っている。そして,MBLの遺伝子変異は、易感染性を引き起こすことが報告されている。そこで、MBL遺伝子の変異と歯周疾患の発症との関係、および、歯周疾患の病態形成におけるMBLの役割を明らかにすることを目的として検討を行っている。 血液検体は、明海大学歯学部付属明海大学病院に来院した侵襲性歯周炎患者、およびコントロールとして健常者より採取した。末梢血から抽出したDNAを、MBLのエクソン1コドン54遺伝子に特異的なプライマーとともにPCR反応液に加え、サーマルサイクラーにて目的遺伝子を増幅した。PCR産物を制限酵素処理後、アガロース電気泳動を行い遺伝子変異を検出した。MBLの血液濃度は、ELISA法(Statens Serum Institute社製)により測定した。 MBLのエクソン1コドン54遺伝子の変異を有する者の割合は健常者において29%であったのに対して、侵襲性歯周炎患者では39%と高い傾向が認められた。また、変異を有する者は、血中MBL濃度が有意に低下していることが明らかになった。これらの結果より、MBL遺伝子変異は、歯周疾患の発症に関与している可能性が示唆された。
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