研究概要 |
新しい骨再生療法の開発を目的とし、各種成長因子の応用が検討されている中、Bone morphogenetic protein-2(BMP-2)は未分化間葉系細胞を骨芽細胞に分化誘導することにより、強力な骨形成作用を発揮することが知られている。これまでに我々は、歯槽骨由来の細胞において、BMP-2が骨芽細胞様分化マーカー(ALP活性,PTH応答性)発現を促進することを報告し、さらにこのBMP-2依存的な骨芽細胞様分化促進作用は濃度の異なるPGE_2により促進的あるいは抑制的に制御していることを報告した。そこで本研究においてBMP-2とEP2/EP4アゴニストの併用による予知性の高い歯槽骨再生療法の開発を目的として研究を行い以下の結果を得た。 (1)ヒト骨芽細胞(HOB)、マウス骨芽細胞(MOB)における、各種PGE受容体(EP1,2,3,4)およびBMPレセプター(BMPRII, BMPRIA, BMPRIB)の発現を確認した結果、EP2,3,4mRNAは恒常的に発現しており、三種のBMPレセプターmRNAも同様に発現していた。 (2)BMP-2とEP2/EP4アゴニストによる相乗的骨芽細胞分化誘導を検討した結果、BMP-2により誘導されたALPase活性はEP2/4アゴニスト添加によりさらに増加された。 (3)PKA-cAMPシグナル伝達系を検討した結果、PKA阻害薬(H89)あるいはPKC阻害薬(GF109203X)で前処理後、BMP-2とEP2/4アゴニストの同時刺激で誘導された、ALPase活性はBMP-2単独刺激時と同レベルまで抑制された。 (4)Smad1/5/8およびCREBのリン酸化におよぼす作用を検討した結果、EP2/4アゴニストはCREBのみをリン酸化し、Smad1/5/8には影響を及ぼさなかった。以上のことから、BMP-2依存的な骨芽細胞分化は、EP2/4アゴニストによりさらに増加することが確認された。またこのメカニズムとして、BMP-2はBMPR-Smadシグナル伝達系路を介しており、EP2/4アゴニストはPKA-cAMP-CREBシグナル伝達系路を介していることが確認された。
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