研究概要 |
申請者らは、海洋生物から培養腫瘍細胞に対する殺細胞活性を指標として二次代謝産物の探索を行い、新規構造を有する化合物を分離し、それらの化学構造を明らかにしてきた。その中で海綿Amphimedon sp.より新規アルカロイドpyrinodemin Aを単離し、その構造を明らかにした。Pyrinodemin Aは、中心部分にisooxazolidine環を有し、両側鎖の末端にピリジン環をもつ極めてユニークな構造の化合物であり、構造の特性から特異な生物活性をもつと期待される化合物である。しかし、pyrinodemin Aは、天然から得られる量が微量であるため、強力な殺細胞活性を示す以外に、生物活性が検討されておらず、また、天然物の誘導化による絶対立体配置の決定も困難な状況にある。そこで、未だ明らかにされていないpyrinodemin Aの絶対立体配置を,可能な2種類のジアステレオマーを光学活性体として合成し、天然物とスペクトルデータを比較することにより明らかにすることを第一の目標とし、以下の研究を行った。 Pyrinodemin Aの3個の不斉炭素をもつ中心部分のisooxazolidine環を、光学活性なアルデヒドとヒドロキシルアミンから合成し、両側鎖をWitting反応により順次導入した。両末端を臭素に変換した後、3-methylpyridineを用いてピリジン環を導入することにより、光学活性なpyrinodemin Aの一つのジァステレオマー候補の合成を達成した。合成したpyrinodemin Aは天然物と^1H NMRデータが一致したことから、相対立体配置が明らかとなった。 現在、天然物の絶対立体配置を明らかにするために、合成した光学活性なpyrinodemin Aと天然物とのキラルHPLCによる比較を行っている。
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