研究概要 |
多くの複合糖質オリゴ糖鎖に含まれる2-アセトアミド-2-デオキシ-β-グリコシド結合を構築する場合、フタルイミド基等で保護した糖供与体を用いてグリコシル化後、脱保護、アセチル化を行なうのが常法である。しかし最近、複雑なオリゴ糖鎖合成の場面において脱保護の問題が指摘されている。そこで、我々はアセトアミド基に容易に変換可能な置換基としてアジド基に着目し、2-アジド-2-デオキシグルコシルジフェニルホスファートを用いる高立体選択的グリコシル化反応を開発した。本年度は本反応の適用範囲を探るべく、各種糖供与体を合成し、様々な糖受容体との反応を行なった。 3,4,6位をベンジルエーテル保護した2-アジド-2-デオキシガラクトシルジフェニルホスファートは対応するグルコース糖供与体と比べ反応性が高く、プロピオニトリル中-78℃でTMSOTfにより活性化を行なうことで、高収率、かつα:β=4:96〜8:92の立体選択性でラムノースやグルコサミンの誘導体など、様々な糖受容体とカップリングすることが分かった。一方、対応するトリクロロアセトイミダートを用いて反応を行なった場合には同様の立体選択性は得られるが、アミジン誘導体などが副生するため低収率であり、ホスファート法の優位性が明らかとなった。また、4,6位をベンジリデンアセタール保護したガラクトース糖供与体も、より長い反応時間を要するものの、やはり高いβ-選択性を示した。しかし、3,4,6位をアセチル基で保護した2-アジド-2-デオキシ糖供与体を用いた場合には溶媒のプロピオニトリルを介してカップリングした化合物が主生成物となり、本法の限界も明らかとなった。
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