研究概要 |
ジヒドロベンゾフランおよびジヒドロインドール骨格を持つ化合物にはネオリグナン類,マイトマイシン類等,興味ある生物活性,薬理活性を示すものが多いにもかかわらず,それらの触媒的不斉合成に関する報告例は極めて少ない.本研究では,キラルなロジウム(II)カルボキシラート錯体を触媒とする,オルト位にアルコキシ基およびアルキルアミノ基を持つフェニルジアゾ酢酸エステルの分子内C-H挿入反応を基軸とする上記骨格の高効率的構築法の開発を目的とし,本年度は以下の成果を得た. o-ベンジルオキシフェニルジアゾ酢酸メチルを基質に設定し,分子内不斉C-H挿入反応を検討した.その結果,N-フタロイル-(S)-アミノ酸を架橋配位子として組込んだロジウム錯体を用いると,cis-ジヒドロベンゾフラン誘導体が高ジアステレオかつ高エナンチオ選択的に高収率で生成することを見い出した.特に,嵩高いt-ブチル基を持つN-フタロイル-(S)-t-ロイシン由来のロジウム錯体Rh_2(S-PTTL)_4を用いトルエン中-78℃で行う反応条件が最適であり,その場合ジヒドロベンゾフラン誘導体が化学収率86%,ジアステレオマー(cis)過剰率>99%,エナンチオマー過剰率94%で得られた.生成物の優先絶対配置は2R,3Sであり,cis体は触媒量のナトリウムメトキシドにより光学純度を損なうことなくtrans体に異性化することを確認した.また,本反応はベンジルオキシ基の芳香環上パラ位置換基の電子的性質に影響を受けないことも判明した.本反応はcisおよびtrans配置を持つ各種ネオリグナン類の合成に適用可能と考えられる.
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