研究概要 |
ジヒドロベンゾフランやジヒドロインドール構造を基本骨格に含む化合物には、ネオリグナン類、マイトマイシン類等、興味ある生物活性、薬理活性を示すものが多い。にもかかわらず、それらの触媒的不斉合成に関する報告例は極めて少ない。本研究では、キラルなロジウム(II)カルボキシラート錯体を触媒とする、オルト位にアルコキシ基及びアルキルアミノ基を持つフェニルジアゾ酢酸エステルの分子内C-H挿入反応を基軸とする上記骨格の効率的構築法の開発を目的とし、本年度は以下の成果を得た。 ο-ベンジルオキシフェニルジアゾ酢酸メチルを基質とする分子内C-H挿入反応では、ジロジウム(II)テトラキス[N-フタロイル-(S)-t-ロイシナート]、Rh_2(S-PTTL)_4を触媒に用いると、完壁なシス選択性、且つ高いエナンチオ選択性(最高94%ee)で目的のジヒドロベンゾフラン誘導体が得られることを既に見出している。そこで、本反応の適用限界を調べるべく、各種アルコキシ基を有するフェニルジアゾ酢酸メチルのC-H挿入反応を試みた。まず、3,4-シロキシベンジルオキシ基を有する基質の反応では、91%eeと高いエナンチオ選択性を維持することを確認し、本反応がシスジヒドロベンゾフラン骨格を有するネオリグナン、blechnic acidの触媒的不斉合成に応用できることを示した。また、シクロヘキシルメチルオキシ基やアリルオキシ基を持つ基質でも90%以上のエナンチオマー過剰率で閉環体が得られたが、後者ではトランス体が副生した。更に、エトキシ基ではトランス体が主成績体として97%eeで得られ、本反応ではアルコキシ基の立体的嵩高さがジアステレオ選択性に影響を及ぼすが、エナンチオ選択性には影響しないことが明らかとなった。シス体のトランス体への異性化が容易であることも既に判明しており、本反応はジヒドロベンゾフラン骨格を有する化合物の立体選択的合成法として極めて有用であることが示された。尚、アルキルアミノ基を持つフェニルジアゾ酢酸エステルの分子内C-H挿入反応では、現段階では高い選択性を得るには至っていない。
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