研究概要 |
触媒反応は、分子を取り扱うための最も基礎となる技術である。新しい触媒機構の発見および解明は、次世代の触媒開発に欠くことができない。本研究では、Lewis酸触媒と弱塩基の組み合わせによるプロトン移動機構に基づく水酸基活性化過程を経て、1,2-ジオールを官能基ならびに立体選択的に活性化する触媒分子を発見した。 具体的には、銅をはじめとする数種類の金属イオンが、1,2-ジオールを活性化することを示した。そして、本反応を基本型として、フェニルビスオキサゾリン-銅(II)錯体がジオールを高い立体選択性で活性化することを見出した。とりわけ、dl-ハイドロベンゾインのモノベンゾイル化による光学分割においては、一方のエナンチオマーがもう一方のエナンチオマーよりも645倍以上速く反応することを発見した。これは、化学触媒による光学分割の例としては最も高い水準の値である。 そして、その立体識別がジオールと銅(II)イオンとの錯形成に基づくのではなく、アシル化の段階での速度論的に支配されることを示した。 このようにして、新たに開発した方法を部分的に保護したmyo-イノシトール類の不斉モノベンゾイル化へ応用する研究へと展開した。
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