研究概要 |
アルケニルセレノニウム塩と活性メチレンカルバニオンとの反応を用いた新規炭素-炭素結合反応を検討した。水素化ナトリウム存在下、β-スリチルセレノニウム塩とベンゾイルアセトンとの反応は速やかに進行し、シクロプロパン誘導体である(1S^*,2R^*,3R^*)-2-アセチル-1-ベンゾイル-3-フェニルシクロプロパンを高収率で与えた。得られた生成物は原料の活性メチレン化合物の電子求引性基の一つが見かけ上転移している興味深い反応であった。その他、活性メチレン化合物の電子求引性基の一つ以上がケトン基である場合、いずれの場合も見かけ上電子求引性基が転移したシクロプロパン誘導体が生成した。しかし、マロン酸ジエチルとの反応からは、電子求引性基の転移が起きていない、1,1-ジエチルオキシカルボニルシクロプロパン誘導体が得られてきた。一方、環状β-ケトカルボニル化合物との反応より、環拡大を伴う、シクロプロパン環を含む縮合環化合物を合成することができた。 非対称光学活性カルコゲニドを反応に用いると、中間体であるカルコゲノニウム塩がジアステレオマー混合物となる可能性があるため、この問題を解消すべくC_2対称光学活性カルコゲニドの合成を行った。すなわち、トリフェニルホスフィン存在下、カンファースルホン酸とヨウ素との反応から容易に合成できるヨードカンファーを、リチウムトリエチルボロヒドリドとセレンより調製したリチウムセレニドと反応させ、新規対称ジオキソセレニドを88%の収率で合成した。一方、ヨードカンファーを水素化アルミニウムリチウムで還元後、水酸基をプロトンスポンジ共存下トリフルオロメタンスルホン酸メチルでメチル化、続いてリチウムセレニドと反応させ新規対称ジヒドロキシメチルセレニドを51%で与えた。
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